各所に散らばっているデータを統合し、有効に活用したいと考えているシステム担当者は多いでしょう。うまく連携できれば、各部門がデータを有効活用でき、全社的な生産性向上も期待できます。データ連携のメリットと、連携基盤の実装方法を解説します。

- 目次
-
- データ連携とは?
- データ連携の目的
- データ連携によって解決できる課題
- データ連携基盤を構築する
- データ連携基盤のメリット
- 必要なタイミングでデータを利用できる
- データの収集・加工にかかるコストを削減
- 全体の業務効率化を実現
- データ連携基盤の実装方法
- スクラッチ開発
- EAIツール
- ETLツール
- データ連携ツールの選択ポイント
- 目的に合った機能が実装されているか?
- 現場で使いこなせるか?
- まとめ
データ連携とは?
本記事ではデータ連携とは、企業の各部門に分散しているデータにつながりを持たせることで、それぞれの部門がデータを資産として有効に活用できる状態にする方法を指します。
経営企画部門や営業部門など、社内のさまざまな部門で必要に応じて必要なデータを適切な形で活用できるようになれば、全社的な生産性向上が期待できます。
データ連携の目的
社内の各所に蓄積されているデータをスムーズに活用できるようにするのが、データ連携の目的です。
例えば、営業部門がSFA(営業支援システム)を用いて営業活動を行っている企業は多いはずです。一方、商品企画部門やマーケティング部門では、販促活動を自動化できるMAツールを活用している企業もあるでしょう。
どちらも同じ業務効率化に寄与するシステムではありますが、両者の連携が取れなければ、同じデータをそれぞれのシステムに何度も入力する手間がかかります。
マーケティング部門のシステムにあるデータを営業部門が使いたい場合、わざわざデータを自部門のシステムに合うように加工しなければならないわけです。
データ連携が可能であれば、そういった手間を削減でき、スムーズなデータ活用が可能になります。
データ連携によって解決できる課題
データ連携を行えば、部門ごとに異なる形式で扱っていたデータを、自部門のシステムで扱えるように加工する手間やコストを削減できます。
部門ごとに違った管理システムを使っている企業は少なくありません。
どのシステムでも同じようにデータを活用できるようになれば、手作業でデータを加工する手間を省くことができ、それぞれの部門が必要なタイミングで、必要なデータをすぐに使えるようになります。
業務の生産性が大きく向上するのは間違いありません。
データ連携基盤を構築する
企業の各所に散在しているデータを連携し、スムーズに活用できるようにするためには、データ連携基盤を構築するのが有効です。
データ連携基盤とは、企業の各部門で個別に最適化されているシステム内のデータを、スムーズにやり取りするための仕組みを指します。
ERPのようにデータを統合して一元管理するようなシステムではなく、既存のシステム間でデータをやり取りするための基盤です。
システムを刷新するよりもコストや時間がかからず、それぞれの部門の業務プロセスを変える必要がないため、現場スタッフにも負担をかけずに済むでしょう。
データ連携基盤のメリット

それではデータ連携基盤を構築するメリットについて、もう少し掘り下げてみましょう。社内でさまざまなシステムを導入している企業ほど、多くの恩恵を受けられるはずです。
必要なタイミングでデータを利用できる
必要なタイミングで必要なデータをすぐに利用できるのが、データ連携基盤を導入する最大のメリットです。
複数の管理システムが社内に乱立している『サイロ化』と呼ばれる状態では、部門ごとに最適なデータ活用法が確立されているケースは多いものの、部門を跨いでデータを利用しなければならない状況で非効率が生じてしまいがちです。
それぞれのシステムでデータのフォーマットが違うため、たとえ同じデータであっても加工に時間がかかり、同じデータだと認識していたものが、実は違っていたという場合も少なくないでしょう。
データ連携基盤を構築しておけば、ほかの部門が使っているフォーマットの異なるデータも、すぐに自部門のシステムに登録・活用できるようになります。最新のデータをすぐに利用できるので、業務上の機会損失を防げることが可能になります。
データの収集・加工にかかるコストを削減
部門間でデータのやり取りをする際に、データの収集や加工にかかるコストを削減できるのも、データ連携基盤のメリットです。
特に手作業でデータを入力している場合、汎用性の高いフォーマットにデータを加工して、入力し直す作業が生じる場合があります。また手作業による入力ミスなども発生する可能性があり、作業スタッフに余計な負担がかかってしまうことに加え、業務に支障をきたすこともあり得ます。
データ連携基盤を導入すれば、データの加工に時間を取られず、さらにデータの品質も高いレベルで均一化できます。特に近年はデータ連携のためのツールも充実しており、専用のアプリケーションを自社開発・導入する必要もなくなりつつあります。
全体の業務効率化を実現
データの連携がスムーズになれば、企業全体の情報が『見える化』されるため、管理部門が全体の状況を把握しやすくなります。その結果、各部門の業務効率化を促進できます。
社内システム全体の連携が取りやすくなり、業務全体を俯瞰した上で、有効な経営上の施策を打ち出せるようになるでしょう。部門ごとの部分最適を維持しつつ、企業全体の業務最適化を実現できるといえます。
データ連携基盤の実装方法

それでは、データ連携基盤の実装方法を解説します。データ連携のためのシステムを自社で開発・導入する企業もありますが、近年はEAIやETLといったツールを使って、できるだけ工数をかけずに連携を実現する企業が増えています。
スクラッチ開発
スクラッチ開発とは、自社のビジネス環境に合わせて独自のシステムを開発することです。
既存システムにはない機能を実装したり、業務に合わせて柔軟にカスタマイズしたりできるのがメリットです。一方で用件の定義から開発まで時間と手間がかかるのに加えて、相応のコストを負担しなければいけません。
特に、システム開発に予算を割けない中小企業の場合、スクラッチ開発はハードルが高いといえるでしょう。自社にITエンジニアがいない企業の場合も、外注するか必要な人材を新しく雇用する必要があります。
そのため、近年はEAIやETLといったツールを活用して、データ連携基盤を構築する企業が増えています。
EAIツール
EAI(Enterprise Application Integration)とは、日本語に訳すと「企業内アプリケーション連携」です。複数のシステム間のデータを連携させるための仕組みを指します。サイロ化した社内システムのデータを、スムーズに連携させる機能があります。
さまざまなデータやアプリケーションを連携できる仲介(アダプター)機能や、データのフォーマットを変換する機能、連携したデータを各システムに振り分ける機能などを持っているのが特徴です。
連携システムをスクラッチ開発するのとは違い、ツールを導入するだけでデータ連携が可能になるので、自社にシステム開発部門を持たない多くの企業に導入されています。
ETLツール
ETLとは英語の『Extract』『Transform』『Load』の頭文字に由来する用語で、社内に散在しているデータを抽出し、各システムで使用できるように変換した上で、データベースに送出するためのツールです。
システム間のデータ連携ができる点はEAIと似ているものの、ETLは大量のデータをまとめて処理するのに向いており、データベースに各システムのデータを集約することを主な目的としている点で、違いがあります。
データをバッチ処理してデータベース化するために使われる場合が多いですが、データ連携基盤として導入されるケースも珍しくありません。
データ連携ツールの選択ポイント

データ連携ツールを選択する際には、自社の目的に合った機能を持っているか、現場で問題なく使いこなせるかを基準として選択することが重要です。
目的に合った機能が実装されているか?
データ連携ツールを選ぶ際には、自社の目的に合った機能が実装されているかを必ずチェックしましょう。
連携の流れを俯瞰してモニタリングしたい場合と、システム間連携のみ可能であれば、モニタリングは必要ない状況とでは、導入すべきツールも変わってきます。
また、既存のシステムとの相性も重要なので、似たようなシステムとの連携事例があるかどうかも、事前にサービスベンダー(提供会社)に確認しておいた方が良いでしょう。
現場で使いこなせるか?
現場で問題なく使いこなせるかも重要です。データ連携ツールの多くは、ノンプログラミングで利用できるため、プログラミングの専門知識がない人でも問題なく操作できるように設計されています。
ただし、機能を充分に使いこなすには、相応のITリテラシーが求められるツールもあるので、実際に担当者が使いこなせるかどうかは必ず確認しましょう。
無料版やトライアル版などを利用できるツールも多いので、まずは使い勝手を確認することをおすすめします。
まとめ
データ連携基盤を実現することで、各所に乱雑に存在していたデータをシステム間でスムーズに活用できるようになります。業務全体の効率化が実現でき、生産性も向上するでしょう。特に、近年はシステム間連携のためのシステムをスクラッチ開発する企業よりも、EAIやETLなどの専用ツールを導入して連携する企業が増えています。自社にITエンジニアがいない企業でも、ツールの導入でスムーズにシステム間連携が実現できるので、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。